ゴミ箱ロボット「MoCoMoN」にデザインされた愛くるしい“不便益“のしくみ

ゴミを拾えないゴミ箱ロボット「MoCoMoN」。その可愛らしい仕草は、見ている人を癒すだけではない。人間が生きる上で大切な「共感力」を育むことができるのだ。意図的にデザインされた「役立たず」という弱さが、人間に「不便」という利益をもたらすというのだ。この記事では、MoCoMoNがもたらす不便益と、人間への意外な恩恵を解説していく。

お掃除ロボットMoCoMoN

豊橋技術科学大学の情報知能工学教授である岡田美智男先生は、少し変わったロボットを作っている。例えばお掃除ロボットMoCoMoNはゴミを見つけることはできるが、そのゴミを処理する機能を持っていない。ロボットとしての機能を有していない無能の産物だと思う方もいるかもしれないが、そういうことではない。実はこのロボット、ゴミを拾ってもらうように促す非言語的な機能を豊富に有しているのである。

出典:〈もこもこ音〉をしゃべるロボット

「モコモコ」と発される擬音語は私たちが最も愛を感じる生命体である子供の発音を採用しており、動きは愛くるしい齧歯類の小動物のような動きをする。ゴミを発見し最も近づいたところで周囲の人間を探し可愛げにお辞儀をする。その愛くるしさに周囲の人間はゴミ拾いを手伝いたくなってしうのだ。

共感力とMoCoMoN

MoCoMoNは“非言語“を利用し周囲に対して「ゴミを拾って!」と伝える。非言語とは、主にコミュニケーションの際に必要な「言葉」以外のものを差し、声のトーン・身振り手振り・表情・仕草などがそれにあたる。

周囲の人間は、先ほど挙げたような非言語を認識し、ロボットという「他者」と共同して掃除を達成するという経験を積むことができる。この体験が、人間が生きる上で大切な「共感力」を育むことができるのではないかと私は考える。

共感とは”他者の感情の状態や考えを感じ理解し、自分事として体験して、それを実行する事”であるが、そのために特に重要となるのが非言語の理解力なのである。

共感力の獲得は、幼少期の体験が深く影響していることから、子供がいるような家庭であればなおさらMoCoMoNの価値は上がる。

引き算としてのデザイン

岡田美智男先生は、本書の中でロボットのデザインは大きく分けて2つあることを紹介している。1つが足し算としてのデザインで、もう一方が引き算としてのデザインだ。足し算としてのデザインは機能を追加していき最終的に人に近づけていくもので、例を上げると自立して歩行することができるアシモのようなデザインの形をいう。そして引き算のデザインはMoCoMoNを代表するような非言語を利用して周囲との関係性を強化していくものである。

 このMoCoMoNのようなデザインが教えてくれるのは「弱さ」にも価値があるということである。先ほどのように弱さを非言語にて開示することは、他者の共感を育み、目的達成の参与を得て、無意識の内に掃除を実施するという行為を引き出している。この可愛げのあるデザインの価値は現在のデザインのあり方に変革を与える可能性を秘めている。

不便と便益

 近代の産業では、モノを自動化効率化し→人の手間を省き→物事を便利にし→人を楽にして→人の役に立つ、このような論理式を利用し様々なモノを大量に生み出してきた。最近は車も自動運転ができるようになり、またAIによって様々な活動が自動化される傾向にある。「物事を便利にする」それは不必要なものは取り除くという行為であり、”行為を実施させないこと”と紙一重である。例えば自動運転の自動車の場合では「運転」という行為を不必要とするように。

 MoCoMoNのデザインはこのデザインのあり方と逆の立場をとっており、ロボット自身で目的達成ができず機能的には不便であるが、人に掃除を行動化させたり、子供の共感力を育んだりと異なる便益を生んでいる。このような便益のあり方を巷では、不便益という。例えばエスカレーターというデザインは”階段を利用して自身の足を利用し登る”という行為を実施させないように仕向けるツールとも言える。しかしこのデザイン、長期的に見れば利用する人々の活動量を減少させ運動不足の要因になる恐れもありうる。もし階段を上がりたくなるようなデザインがあればどうだろう。人々は日常の活動量を稼ぎ運動不足を減らすことができるかもしれない。

出典:竹中工務店 階段を登りたくなる映像システム「ta-tta-tta楽しく階段ちょい登り」

ウェルビーイングなデザインに!

便利なモノやより良いモノを追求しすぎて無くなったコトやモノの価値を今一度確認し、人間や社会や地球にとって何がwell-being(最も良いあり方)なのか、再度定義する必要があるかのではないのか。不便なものに隠された便益を見つけ創造するためには、自身の足を使って経験してみたり、手を使って作成してみたり、結局労力がかかることをしないと創造することは難しい。さあ!自身の手と足でまずは日常の不便を今一度、体験してみよう!

参考文献

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