筋肉痛とエト・セトラ

ハードな運動の後に、必ずついてくる努力の勲章、筋肉痛。この筋肉痛ですが、その現象の理解や対処方法、筋肉痛を誘発させにくい状態が作れるのはご存知でしょうか?今回はそんな筋肉痛について身体の専門家として具体的に掘り下げていきたいと思います。

目次

筋肉痛とは

ハードな運動や慣れていない動作の後に起こる筋肉痛のことを遅発性筋肉痛(delayed-onset muscle soreness)と言います。24〜72時間後に発生すると言われています。

また、アスリートなどが行う激しい運動の直後やその実施の中で起こる筋肉痛は、即発性筋肉痛と言います。この時に皆さんが、普段の生活の中で経験する筋肉痛は、遅発性筋肉痛がほとんどでしょう。

多くのケースで伸長性の収縮(耐えて伸ばされる筋収縮のあり方)によって起こる微細損傷が炎症反応を引き起こすとされています。

例えば、登山などの下り坂では大腿部前面(モモ前)の筋肉が耐えて伸ばされる様なシュチュエーションになります。そのような状態が長時間続く様であればモモ前に筋肉痛が現れます。

他にも、トレーニングなどでJUMPの動作や昇降動作などを繰り返す様な動作で、臀部(お尻)やハムストリングス(裏モモ)が同様に伸長性の収縮を繰り返しますので、お尻・裏モモに筋肉痛が発生したりします。

まとめ
❶皆さんが経験する多くの筋肉痛は、遅発性筋肉痛(delayed-onset muscle soreness)と言います
24〜72時間後に発生します
伸長性の収縮(耐えて伸ばされる筋肉収縮のあり方)によって起こる微細損傷が炎症反応を引き起こします

筋肉痛って悪いの?

答えです。筋肉痛は悪ではありません。

パフォーマンスを上昇させていく過程で筋肉痛は必要な過程となります。これは年齢問わず必要な過程です。基本的に筋肉に対して成長を促すため(タンパク質合成を促す)には、日常生活よりも大きな負荷を身体にかける必要があります。もうすでに適応している負荷の場合は、骨格筋に対して何も影響を与えないと考えるべきで、マンネリ化しているケースが多いでしょう。

高齢者だからって筋肉を作る必要がないと言うのは、間違った見解です。骨格筋の体積上昇は、糖尿病の予防やサルコペニアの予防(筋萎縮)、認知症の予防に紐付いているとされています。正しく筋肉づくりをし、貯筋をする習慣がなければ、不健全な老後を歩むことになるでしょう。なんてbad-beingなのでしょうか。

重要なのは、現在実施している運動習慣がどのストレス反応を呈しているのか、自身で把握できる状況を作ることです。ストレス反応には次のようなカテゴリーがあります。

まとめ
・筋肉痛は悪ではありません。
・パフォーマンスを上昇させていく過程で筋肉痛は必要な過程です。
・筋肉を培う習慣は様々な予防に貢献します。

ストレス反応と筋肉痛

では、具体的に運動後にはどの様なストレス反応があるのでしょうか?若干専門的になりますが、皆様の健康リテラシーの上昇を担う立場として、以下のストレス反応をご紹介したいと思います。

ストレス反応内容
警告反応期必要な身体の部位への酸素供給や血液供給の増加などのストレッサーに対する最初の反応・提案された負荷に慣れていない
・運動実施初期
抵抗反応期運動単位の動員増加などのストレッサーに適応するための機能的能力の向上・提案された負荷に慣れた
・運動実施2〜3ヶ月
疲弊期耐えることができないストレスが長引くことにより疲労が生じてシステムの崩壊もしくは怪我につながる。・不適切な動作
・不適切な休養
・不適切な負荷
NASM Essential Personal Fitness Text

例えば、HIIT(高強度インターバルトレーニング)の様な強度の高いトレーニングを実施したとしましょう。

日常よりも高い負荷なシュチュエーションによってあなたの身体では、利用部位(筋肉)への酸素供給や血液供給の増加が起こり24〜72時間後に筋肉痛が出現します。(警告反応期)適切な休養をとることができれば、微細損傷された部位が修復され炎症反応である筋肉痛もなくなります。

正しいリカバリー・運動頻度で同様の運動を定期的に実施できた場合、1ヶ月半〜2ヶ月目で適応が起こります。あなた自身も体力がついたと言う様々な出来事を感じる様になるでしょう。(抵抗反応期)

ここで大切なのは、抵抗反応期をむかえた場合に同様な負荷で実施し続けている場合は、運動効果が変わらないと言う結果になります。(安定期)多くのトレーナーが3ヶ月に1回と言うペースで評価をしたり、筋トレ系のインストラクターがプレコリオを対象集団によって変化させるのは、マンネリ化による運動効果の減少を起こらない様にするためなのです。

疲弊期と3大・不適切

先ほど紹介した表の中で最後の段に存在する疲弊期「耐えることができないストレスが長引くことにより疲労が生じてシステムの崩壊もしくは怪我につながる。」と言う現象はどの様な条件下で起こるのでしょうか。

それは、不適切な動作・不適切な休養・不適切な負荷という3大・不適切が発生している場合です。 筋トレ系レッスンで行うスクワットを実施するケースで紹介していきましょう。

不適切な動作

A子さん

いつも仕事でヒールを履いています。そんな私ですが。最近は健康のために、筋トレ系レッスンが会員の中で人気とのことで参加。スクワットの動作がうまくできない様で、膝を過剰に扱うなどの誤った動作を再現してしまい。2ヶ月後、膝の痛みが発生してしまいました。


この様なヒールの靴を履いているA子さんの場合は、膝関節の過剰な利用が日常動作の中で慢性化する傾向があります。結果、その不適切な動作の実施に集団レッスンという環境で気づくことができずに膝関節を過剰に利用してしまった。というケースです。レッスン以外の局面でもその様な動作になってしまうことから、日常動作が適切な休養に繋がらなかった、とも言えるでしょう

不適切な休養

B太郎さん

青年時代ハードな運動部で過ごしました。水を飲まないなんて当たり前でした。今も健康のために、毎日の様にハードなトレーニングを自分に課しています。レッスンに参加することも大好きで、最近人気の筋トレ系レッスンに参加。ここでもハードを貫いちゃいます。でも最近なかなか裏モモの筋肉痛が取れないのに悩んでます。

この様なケースの場合は、休養を怠っている場合があります。身体がストレスに適応し効果を得るためには正しく休養をとることが大切です。筋肉痛がある期間はしっかりと身体を休ませましょう、リフレッシュを目的に運動を実施する場合でも、低い強度(水泳・水中ウォーキング・エアロバイク)の運動を実施しましょう。

睡眠や食事そして入浴なども、質の高い休養となり筋肉痛の抑制を導きます。そちらは後ほど紹介していきます。

不適切な負荷

C埼さん

人間ドックでメタボリックシンドロームとの診断を受けました。運動をやらないといけないとのことです。でも、運動はあんまりやったことがありません。人生100年時代、身体の健康がとても大切と聞いて、フィットネスクラブに入会しました。一番効果のありそうな筋トレ系レッスンに参加してみました。効果を出すためにウェイトもたくさん足しました。だけど、なかなか筋肉痛が治らなくて。


レッスンの強度が不適切な場合は、実施エクササイズ間で回復がなかなかできないという結果を生み出してしまいます。特に運動習慣がなく、運動そのモノが初めてで自分自身で実施していくという場合は、中強度の有酸素運動を積極的に実施していきましょう。

上記の様な条件のもとで、疲弊期がやってきます。自身の裁量で運動を実施していく場合は、上記3つの様な、状況に至らない様に気をつけましょう。

3大・不適切をリスクマネジメントする方法は!

先程あげた3大・不適切ですが、最も効率よく運動習慣を構築していく方法でパーソナルトレーナーを利用するという方法があります。適切な学習を受けたパーソナルトレーナーは、対象者を評価した上で適切な動作・適切な負荷・適切な休養を見出し、運動プランを策定します。実施していくなかで身体のリテラシーやセルフマネジメント力が高まり自身の裁量で参加するレッスンやセルフで行う運動でも疲弊期を起こさない様になります。

疲弊期という現象を起こさないためにも、適切な学習を受けたパーソナルトレーナーに頼りましょう。では、適切な学習を受けたトレーナーとは、どの様な傾向があるのか以下に特徴をまとめています。

❶トレーナーが有する保有資格の中でも資格発行主である協会側もしくは国が品質を維持するものとし、品質管理を維持する仕組みとして更新制度を有している場合。
❷トレーナーが所属する施設が品質管理を維持する何かしらの施策をこうじている場合。

上記の場合、ガイドラインを基づいた評価や運動の開発等の実施が保証されています。そうでない場合はも存在するので、気をつけましょう。ちなみに以下にあげる資格は❶の属性を有していると言えます。


・NATA公認アスレティックトレーナー
・JSPO-AT(アスレティック・トレーナー)
・スポーツプログラマー 
・健康運動実践指導士/健康運動実践指導者
・NSCA-CPT / CSCS
・NASM-CPT
・NESTA-PFT
・AFAA
・ACSM       etc…          

フィットネスの市場には様々な「トレーナー」と呼称する人々や「指導者」と呼称する人々が存在します。その中でも、正しく自身の品質管理をデザインしている方を選ぶのが無難な選択になるでしょう。

セルフケア力をあげよう!筋肉痛を抑制させる方法は!?

とは言っても、パーソナルトレーナーは料金が加算されますよね。金銭的な余裕がないという方でもしっかりと身体的なウェルビーイングが保たれる様に、筋肉痛を抑制する方法、リカバリーの質を高める方法を最後にご紹介します!

サウナやお風呂で交代浴をしよう。

筋肉痛が予想されそうな、いつもより強度の高い運動や難易度の高い運動に挑戦した場合、交代浴を利用して筋肉痛を抑制しよう。サウナの入り方は同記事の「サウナで見る宇宙「整う」の方法と原理」でまとめたのでチェックしてみてね。

入浴の場合の交代浴の方法は7分湯船に使って1分30秒から3分ほど水風呂に入るというのを3セット繰り返すのをお勧めするよ。しっかりと実施できれば疼痛抑制効果が期待でき、筋肉痛の軽減に貢献するぞ!

食事をしっかりと摂ろう

激しい運動や慣れていない運動を実施しました!その後のサプリメンテーションや食事のあり方を紹介するよ。

STEP
運動直後30分以内

アミノ酸を摂取しましょう。運動後はまだ胃腸に血流が行き渡らないので、プロテインの摂取は消化不良を起こす傾向にあります。

STEP
運動後30分〜1時間

ストレッチなどを実施してリラックスモードに入ったと頃でプロテインを摂取します。プロテイン摂取目安は一回に20g〜30gがお勧めです。ある程度の糖質と一緒に摂取することによってインスリンの分泌をう流し吸収の効率を上げていくので、牛乳・バナナをミックスしたプロテインなんかはお勧めです。

STEP
食事では、ビタミンが豊富な食事を摂ろう!

タンパク質の摂取目安(自体重×1.2〜1.5倍)を意識しながら、3大栄養素の代謝に関わるビタミンB群が豊富に含まれた食品を摂取しよう。(例:豚肉・魚・鶏肉・玄米 etc)他にも抗酸化作用の効果があるビタミンA・C・Eが豊富な野菜類をしっかりと摂取し回復がすすむ状況を作り出そう!

栄養素を効率よく吸収するためは、腸内環境を整え吸収しやすい状況を作っていく必要があります。以前の記事で記載した「腸内微生物の憂鬱」で具体的にまとめているので気になる方はチェックしてみてください。

アルコールは控えよう

アルコールが含まれるお酒は控えましょう。アルコールを分解する過程が筋肉の回復よりも優先されてしまいます。筋肉痛が長期間残る他に免疫力も低下してしまうので、高強度な運動を取り入れた日のアルコールは避けましょう。

睡眠をしっかりと摂ろう

睡眠時に摂取した栄養素が筋肉痛の部位へ行き渡り回復が促されます。必ず7時間は取れる様に睡眠時間を確保しましょう。睡眠については「あなたってもしかして、隠れ不眠!?」の中で具体的な方法を記載しているので確認してみてね。

最後に

皆さん、いかがだったでしょうか?筋肉痛について理解することできましたか。ハードな運動の行いすぎで疲弊期を作らない様に、休養を含めた習慣づくりをしっかりと考えていきましょうね!それでは、次号でまたお会いしましょう。

参考文献
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